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中田無双

北都留森林組合 参事

林業・木材業界の一年の振り返り
1.森林環境譲与税について
2.安全対策の進化について
3.獣害対策について

2019.12.29  

1.森林環境譲与税について


2019年3月
「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」※1が成立・公布されました。

※1 林野庁HP参照

林業界の悲願であった森林整備に必要な安定財源確保は達成されました。
国民皆に森林に関心を持ってもらい国全体で森を支えていく仕組みがスタートすることになります。

税の使途は、当初、間伐などの森林整備に限定されていましたが、最終的には、人材育成・担い手の確保や木材利用の促進、普及啓発などが追加されました。

簡単に言えば森林の持つ様々な恵みを国民みんなで分かち合うために税を有効活用していこうということだと理解しています。ここまでは大変喜ばしいことでした。

しかし、この税の配分割合は次のように

私有林人工林面積割50%
林業就業者数割20%
人口割30%

となっています。

つまり、森林がほとんど無い都市の市町村にも30%が配分されることになりました。

実際に2019年9月30日に100億円が全国に初めて配分されましたが、一番多くのお金が届いたところは森林面積率が8%しかない横浜市の7,104万円でした。

今、人口が少なく林業就業者も少なく、私有林人工林も少ない山村では配分される森林環境税が殆どない状態となっているところが数少なくありません。

実際に私の住む山梨県小菅村も人口700人と少なく、森林に占める私有林人工林も比較的少なく(東京都水源林が村の34%を占める)、配分される税は数百万円の額しかありません。

この額では、残念ながら限られたことにしか税を活用することができません。

私の所属する北都留森林組合では経営理念「森を中心とした持続可能な流域循環型社会の実現」を掲げ『流域』連携の中で森林や山村に関する様々な諸問題を解決していきたいと流域の市町村に協働を呼び掛けています。配分された税の使い道は、基本的にはそれぞれの市町村に委ねられています。

私は、都市に住む多くの皆様に、この国民一人一人から集められる森林環境税が

「どうしたら有効に活用できるのか」
「何に使うことが一番ふさわしいのか」

にぜひ関心を持って頂きたいと考えています。2022年には毎年約600億円というお金が集められることになります。

私は、まずは皆様に林業に関心を持って頂きたいと考えております。

そのための一歩が林業現場に都市の方々に訪れて頂き、そこで実際に林業現場で働く姿をご覧頂くことで林業従事者である我々と対話をして頂きたいと考えています。
そこで発生する交通費や受入側の経費などに税を活用頂ければと願っています。

次に子供たちの自然体験の機会を増やして頂きたいと思います。
学校教育の予算は非常に少なく、子供たちが森林と触れ合う機会を提案しても残念ながら予算の問題で実現できないケースが多々ありました。全国の子供たちに本物の自然体験をこの税を活用して増やして頂きたいと願います。

次に林業の人材育成に必要な費用負担に活用頂きたいと願います。
特に林業に関心のある若者たちが職場見学やインターンシップで本物の林業を肌で触れ、気軽に体験できる機会を増やしていきたいと考えています。


林業現場からの情報発信が非常に少なく必要な情報を入手できない現状もあり、林業側の情報発信に対する支援策にも応援頂けると大変有り難いと思います。

ここまではあくまで私の希望を述べましたが、何れにせよとまずは議論するところから始めなければと考えています。

2.安全対策の進化について

林業の安全対策は道具の技術進歩や法律改正もあり日に日に進化しています。

確かに全産業から見ると林業の労働災害発生率は残念ながら高い水準であることは間違いありませんが、林業界全体の意識改革、安全対策は私の入った20年前から比べれば格段に進化してきています。

林業が若者たちに選ばれる産業に生まれ変わるためには、本気で改善改革を進めなければ、日本林業界に未来が無いとの危機感が変革の原動力となっていると感じています。

当組合でも「お金で買える安全は全て購入する」と業界ではいち早く夏場の下刈用に「空調服」を導入し、防蜂手袋、ロガーパンツ、ロガーブーツ、防振手袋、林業用高機能ヘルメット等々を全職員に支給しています。

会社の本気は全職員にもしっかり伝わり、職員からも安全対策へ改良改善案が次々と提案されるなど労災発生率を大きく引き下げました。

「安全・安心」無くして林業の未来はありません。

安全対策の中で自分たちの努力だけではどうにもならない問題として、山間部の携帯がつながらないエリアが多数存在していることが挙げられます。

携帯圏外において、緊急時の連絡手段としては無線機を持参することもありますがどうしても電波の届く範囲が限られています。

そのような中、某企業がLPWA(Low Power Wide Area)※2を活用した通信手段による林業の安全対策の実証実験を始めようと試みが間も無くスタートします。
LPWAを活用することで携帯が圏外であっても災害発生時の 緊急連絡に活用したり、作業現場にいる職員同士の意思疎通がスムーズにできるようになることを願っています。

※2 LPWAについて

3.獣害対策について

「持続可能な林業」にとって獣害対策費をどう捻出するかは大きな課題です。

今、皆伐再造林をする場合はシカ食害対策を行わなければ再び山に戻すことができないくらいシカによる食害が拡大しています。

今のところシカから苗木を守るためには、山全体に網を張るか、苗単木ネ1本1本に保護ネットつけるくらいしか対策がありませんがどちらも高額な費用が発生しています。
森林所有者に獣害対策全ての費用の負担を強いることは現実的に難しいところです。

個人的には、増えすぎたシカを適正な数まで減らす頭数制限を行うことが現実的な解決策では無いかと考えています。

しかし、山村の猟師も高齢化が進んできており、捕獲できる頭数も限界があります。

そこで新たな捕獲策として「くくり罠猟」に可能性を感じています。

私の住む山梨県小菅村ではこの「くくり罠猟」で捕獲したシカを肉、革、角等々を上手にお金に変えて収入を得ながら山村で暮らしていくために株式会社boomboom※3という会社を立ち上げた若者たちがいます。

彼らのような山の恵みを上手にお金に変える仕事を創造していくことで山村で暮らしていくという生き方は大変魅力的であり、これから大きな可能性を感じています。

「森林サービス産業」という概念がありますが、林業と他の仕事を組み合わせていく「半林半X」という暮らし方はこれから益々面白くなっていくと思います。

若者たちの新しい発想で、山村の新しい仕事をどんどん創造していくことに挑戦して頂きたいと願っています。

山村には面白いコンテンツ、素材が沢山ありますが、山村側の発信力が弱く、まだまだ世に知られていないことが多くあります。
優秀なプロデューサーがこれらにどうスポットライトを当て、どのような切り口で世の中へ売っていくことができるか、その手法によってはビジネスになる可能性は無限大では無いでしょうか。

※ 3 (株)boomboon について

正直、林業におけるシカ食害問題ではどのような対策をすれば良いのか、思い悩んでいるところです。ぜひ、多くの皆様からこのシカ食害問題解決への良きアイディアを頂戴したいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

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