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大谷 栄徳

樹木医

森林の成り立ち「遷移(せんい)」

2019.12.13  

1.「遷移」とは

森林の基礎知識の1つ「遷移(せんい)」。

木が生えていない場所が森林になるまで、その成り立ちには、一定の法則があります。

その法則の1つが「遷移」で、「植生遷移(しょくせいせんい)」とも言います。

遷移とは、Aという植物群落が、時間の経過とともにBという植物群落に変化していく現象のことをいいます。

簡単に言うと、運動場の様に何も生えていない裸地に、草が生え、やがて木が生え、森になり、時間(年月)が経過する中で、その森に生えている樹種が別の樹種に変わり、最終的に樹種の入れ替わりがなくなり、安定した森林になるが、遷移です。

造成した場所や火山が噴火した跡地など、地上の木も地中の種もなくなり、ほかの場所から種が運ばれ、それが芽吹いて始まる遷移を「一次遷移」といいます。

木を伐採した跡地のように地上に木がなくても、切り株から萌芽したり、地中にある種が芽吹いて始まる遷移を「二次遷移」といいます。 

今回は、一次遷移の流れで、イラストを使って説明したいと思います。

 

 2.「一次遷移」の流れ

人が造成した様な何もない場所「裸地」からスタート。



はじめに、草が生えます。



一番早く生える植物なので、草冠に早いと書いて「草」。

ちなみに、岩などの上に、コケが生えて、その上に草や木が根を張ります。



コケが、草が育つための土台となるので、草冠に台と書いて「苔」。 

 

次に、生える植物が、茨などつる性植物です。



草の次に生えるので、草冠に次と書いて「茨」。

 

やがて、陽当たりを好む樹木が生えます。



陽当たりが良い場所に生える(を好む)樹木を「陽樹(ようじゅ)」と言います。

裸地や伐採跡地のように日当たりが良い環境に、真っ先に生える樹木を「先駆性樹種(せんくせいじゅしゅ)」や「パイオニア」と言います。

代表的な先駆性樹種として、アカマツ、クロマツ、タラノキ、アカメガシワ、カラスザンショウ、クサギなど。

山菜で有名なタラノキは、陽樹&先駆性樹種なので、伐採跡地など日当たりの良い場所を探すと、発見しやすい、ということになります。

 

やがて、陽樹が生長すると、林内に光が行き届かなくなり、生えていた草・茨・つる性植物が無くなり、陽樹が優占する森になっていきます。



陽当たりが良かった環境が、成長した陽樹によって、林内が薄暗くなります。

すると、鳥などによって、他所の場所から運ばれてきた種の内、薄暗い環境で発芽できる種が発芽し、成長していきます。



このように薄暗い環境を好む樹木や薄暗い環境でも生育できる樹木を「陰樹(いんじゅ)」と言います。

なお、薄暗い環境でも発芽するが、成長にはある程度の光を欲しがる・・・というような、陽樹と陰樹の間の樹木もありますが、今回は、便宜上、陽樹と陰樹に分けて説明します。

陰樹がどんどん成長し、陽樹より大きくなると、陽当たりが悪くなり、少しずつ陽樹が枯れていきます。



大きくなった陰樹によって、陽当たりが悪くなると、陽樹が無くなり、陰樹が優占する森林に変わります。



林内では、若い陰樹が生え、陰樹中心の森林になっていきます。

林内に生えた若い陰樹が大きくなって、先に生えていた陰樹よりも大きくなることもあります。

同じ陰樹でも、成長が早くて大きくなる樹種、ゆっくり成長しながら大きくなる樹種があり、後から生えてきた陰樹が、先に生えている陰樹より大きくなり、その場を占有することもあります。



最終的に、森林の中で、樹種の入れ替わりがなくなり、安定した状態になります。

この安定した状態を「極相(きょくそう)」と言い、このような状態の森林を「極相林(きょくそうりん)」と言います。

極相という状態を作り上げる樹種を「極相樹種(きょくそうじゅしゅ)」といい、シイやカシ、ブナ、ツガなどがそれにあたります。(イラストでは、濃い緑の樹木が極相種、としています。)

つまり、最後に森林を支配する最強の樹木ですね。

 

遷移の流れを簡単にまとめると 

「裸地 → 草 → 茨・つる → 陽樹 → 陰樹 → 極相」 の順に移り変わります。

 

3.「二次遷移」の始まり

しかし、極相林がずーっと続くわけではありません。

台風や干害などの自然現象によって、一定の空間に生えている倒木が倒れたり、枯れたりすることがあります。

台風によって一斉に倒木する・干害によって一斉に枯死するなどによって、森林内に空間ができる現象を「攪乱(かくらん)」といいます。





人が行う伐採も攪乱の1つです。





薄暗い環境だった林内が、攪乱によって、光が良くあたる明るい環境が出来ます。

下から見上げると、こんな感じに。



光が当たるようになると、再び、草・茨・つる・陽樹など、陽当たりの良い環境を好む植物が生えてきます。



こうして、再び、遷移が始まります。

 

このように森林の中では、至る所で、小さな攪乱や大きな攪乱が起こり、遷移が始まります。

 

4.まとめ

その結果、色々な年齢の樹木、色々な樹種、色々な樹木の高さで構成された複雑な森林が出来上がります。

そして、それぞれの環境に適した様々な生き物たちが育まれます。

これが、生き物の多様性につながり、多様な生態系が構築される、ということです。

 

自然環境は、地形・地質・方位・土質など様々な要因があるため、全く同じと言える環境は、ほとんどありませんが、「遷移」という法則に基づいて、森林は成り立っています。

人間社会も少子高齢化で問題になっていますが、森林も同じで、子供から高齢者までバランス良く生えていると、生物の多様性が豊かな環境になるというわけです。

 

林業で行う下刈りや除伐などの施業は、植えた木や育てたい木以外の植物の遷移を止める、遅らせる、抑制させるといった行為にあたります。

 

「コストを縮減したいから」と言って、タラノキなどの陽樹が生えてくる現場で、無下刈りや隔年の下刈りは、あまりお勧めできません。

 

と言うのも、それぞれの環境によって、遷移の進行が早い・遅い、草系のみ・陽樹が生えているなどの差があります。

その差を現場で見極め、遷移を予測することで、下刈りを毎年すべきか、隔年で十分かという判断材料に生かすことが出来ます。

 

つまり、じっくりと現場を観察し、その現場に適した施業を選択しましょう、ってことですね!

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